これまでに「マーケティング1.0~4.0」を発表してきたマーケティングの第一人者であるフィリップ・コトラー氏が、「マーケティング5.0」という新たな考え方を提唱しました。インターネットやSNSが世の中に浸透し、ますます加速していくデジタル社会にフィットするよう、画期的なアイデアが紹介されています。こうした新しいマーケティング戦略の考え方を知っておくことは、日々移り変わる消費者ニーズを取りこぼすことなく、自社の売上につなげていくために非常に重要なことです。今回は、マーケティング5.0とは何か、マーケティング5.0が生まれた背景や、マーケティング5.0の構成要素について詳しく説明します。
マーケティング5.0とは? 1.0~4.0と異なる点
ここで、マーケティング1.0~4.0について軽くおさらいをしておきましょう。
・マーケティング1.0「製品主義」
この時代のマーケティングは、消費者の要望よりも製品の機能性や品質に注目していました。
・マーケティング2.0「消費者志向」
「消費者が何を求めているのか」をテーマとした、消費者志向の考え方です。
・マーケティング3.0「価値主導」
「どれだけ社会に貢献しているか」「その製品が世界をよりよくするものか」をテーマとした、価値主導の考え方です。
・マーケティング4.0「自己実現」
製品やサービスにより、顧客が「なりたい自分」「あるべき姿」を発見して達成することを目的とするマーケティング手法です。インターネットやSNSの普及により、従来型からデジタルへ変化しました。
マーケティング1.0~4.0はこのように変化してきました。
マーケティング4.0でも顧客体験の向上が重要視されていましたが、マーケティング5.0では更に、テクノロジーを応用し新たな価値提供が求められる時代に突入しています。マーケティング5.0は、ビッグデータやAIといったテクノロジーを応用し、顧客体験価値を高める新しい時代のマーケティング方法です。つまり、テクノロジーと人間性の融合を実現する次世代のアプローチなのです。
従来のマーケティング戦略は、活用できるテクノロジーの種類が限定的であるといった課題を抱えていましたが、AIやIoT、ロボティクスといった「ネクストテクノロジー」の発展を受け、顧客体験価値の向上やマーケティング活動の効率化を図るためのマーケティング5.0が提唱されたのです。
マーケティング5.0が生まれた背景
マーケティング5.0が登場した背景には以下のような課題があるとされています。
世代間ギャップ
現在のビジネスシーンにおいて、経営者やマーケティングリーダーと言われるような人たちはX世代もしくは、Y世代にあたる人たちが多いでしょう。
一方で、マーケットの中で影響を与える存在は、Z世代、α世代へと移り変わっています。
生まれた時からインターネットのある彼らは、従来とは異なる消費者行動や価値観を持っていると言われています。
Z世代以降の人たちは、テクノロジーが身近にあるのが当たり前であり、自分たちがより必要で価値があると感じることに注力できるよう、テクノロジーを上手に利用しているのです。
多くの企業が「世代間ごとにニーズや消費傾向は異なる」という事実を実感していても、自社のマーケティング手法を最適化できておらず、対応しきれていないというのが現状です。そのため、現在の売り上げを維持しつつ、未来に向けてポジショニングを築いていくために、マーケティング5.0へのアップデートが求められているのです。
富の二極化
テクノロジーの発展は社会の利便性を向上させた一方で、富の二極化を加速させる要因にもなっています。富の二極化とは、最上層にあたる人々は繫栄する一方で最下層の人々が貧困に苦しんでいる、または経済的に極端な格差がある状態のことです。
例えば、多くの雇用を生んでいた分野においてAI導入が進んだ場合に失業者の増加を招くといった現象などがあげられます。業務の自動化が進めば、雇用されるのは専門性が高い知識や技術をもつ一部の人材となり、この結果失業者が生まれます。
テクノロジーの発展が社会のあらゆる利便性を向上する反面、このような富の二極化を加速させ、不均衡を生じさせるのです。
コトラーは、富の再分配を実現させる方法として「企業が目的をもって社会に投資し、テクノロジーを活用していかなければならない」としています。
富の二極化問題を打開するためには、企業はよりサステナブルなマーケティング活動が必要となります。その指針は、国連が定めた持続可能な開発目標(SDGs)にあるとしています。
デジタル・ディバイド
デジタルデバイドとは、「インターネットやパソコン等の情報通信技術を利用できる人と利用できない人との間に生じる格差」を指し、そこから社会的にデバイド(divide=分断)が起こることです。日本語では、「情報格差」とも言われます。
デジタルの普及はグローバルで進んでいますが、それでも完全には普及しているとは言えません。機械に人間の仕事を奪われるという恐れや、テクノロジーによって人と人の関わりで培われていた貴重な経験が失われるといった考え方などが障壁となっています。
こうした考え方は思い込みや想像で語られることも多く、しっかりと事実を把握する必要があります。人々の「デジタル化が社会的関係を破壊するかもしれない」という恐怖心を払拭するためにも、企業によるマーケティング5.0の取り組みが求められているのです。
マーケティング5.0の5つの構成要素
ではここで、マーケティング5.0が具体的にどのようなものなのか、構成要素を見ていきましょう。
マーケティング5.0には、5つの構成要素があります。この5つの構成要素は、2つの規律(ベースとなるもの)と、3つのアプリケーションとに分かれます。
2つの規律とは、データドリブンマーケティングとアジャイル・マーケティングのことで、3つのアプリケーションとは、予測マーケティング、コンテクスチュアル・マーケティング、拡張マーケティングのことを指します。
それでは、それぞれについて説明します。
規律①データドリブン・マーケティング
データドリブン・マーケティングとは、顧客データを分析して、その結果をマーケティング戦略の立案や改善に活用する方法です。
顧客データにはさまざまな要素が含まれており、例として、ユーザー属性、行動履歴、購買履歴などがあげられます。顧客データは企業内外から収集され、顧客のニーズなどを把握するためのビッグデータとして使用されます。ターゲティングやパーソナライズに役立てることで、よりユーザー目線のマーケティングが可能となります。
規律②アジャイル・マーケティング
ソフトウエア開発の分野などで取り入れられているアジャイル開発の概念を、マーケティングに置き換えた方法です。絶えず変化する市場ニーズやビジネス環境に迅速に対応できるように、社内体制を整えたり戦略を立てたりします。
アジャイル開発は、先に大まかなシステムを作成してリリースした後に、改善や拡張をしていく手法です。長期的なプロジェクトを進めるのではなく、細かい施策に分けて取り組むことで、顧客ニーズや市場の変化に合わせてスピーディーに調整することが可能になります。
変化が激しい現代では、分散型・部署横断型のチーム作成や迅速な意思決定ができるフローの設定など、アジャイル開発の概念を取り入れたマーケティングが求められています。
アプリケーション①予測マーケティング
予測マーケティングは、機械学習が可能な予測分析ツールなどを活用して、マーケティング活動の結果を事前に予測する手法です。
アプリケーション②コンテクスチュアル・マーケティング
コンテクスチュアルマーケティングは、簡単に言うと、ユーザーが見ているページやコンテンツに合った広告を自動で表示する手法です。ユーザーが読んでいる記事や見ている動画に関連する広告が出るので、広告がその場にピッタリ合っていて、ユーザーの興味を引きやすくなります。コンテクスチュアル・マーケティングによって、顧客の活動情報からそれぞれにあったプロモーションを行えるのです。
アプリケーション③拡張マーケティング
拡張マーケティングは「チャットボット」「バーチャル店員」など、人間を模倣できる技術を応用して、顧客体験の向上をめざすマーケティング手法です。
コトラーは、拡張マーケティングを実施することによって、デジタルを用いた「スピード」「利便性」に、人間ならではの「温かみ」をプラスできるとしています。
マーケティング5.0における「3つのアプリケーション」の取り組みの成否は、2つの規律にかかっています。つまり、マーケティング5.0を進めるうえでは、データドリブンが前提になるということです。
3つのアプリケーション(予測、コンテクスチュアル、拡張)は目的達成のためのパートナーです。そして、市場ニーズに迅速に対応するアジャイル・マーケティングへとつながっていきます。
また、データを“活用”していくためには、市場の変化に機敏に対応するための「アジャイル(俊敏性)」を持った組織作りも求められます。
データドリブン環境を構築し、データ分析から全体戦略を描けるマーケティング組織を構築するためには、デジタルテクノロジーの活用に対する全社的な納得感が必要です。
このような取り組みは部門単位で実現できるものではなく、組織をあげた変革が必要です。マーケティング5.0に向けた取り組みでは、まず「組織全体で進めるもの」という意識付けが重要となります。
テクノロジーを駆使して人間性と融合したデジタル活用を実現しつつ、データドリブンに基づく施策をマーケティング活動に組み込んでいくことが、マーケティング5.0への近道となるのです。
フィリップ・コトラー氏の「マーケティング5.0」は、テクノロジーと人間性を融合させた次世代のマーケティング手法です。データドリブンな意思決定とアジャイルなマーケティング戦略を組み合わせることで、企業は顧客のニーズに迅速に対応し、競争力を高めることができます。マーケティング5.0を理解し実践することは、未来のビジネス成功への鍵となるでしょう。これを機に、あなたのビジネスにもマーケティング5.0の考え方を取り入れることを検討してみてはいかがでしょうか。
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