最終更新:2025年2月
グローバル化や情報化が進み、人々の価値観やライフスタイルが多様化する中、企業には、多様な顧客のニーズに応えることが求められています。
そこで注目されているのが「インクルーシブマーケティング」です。
インクルーシブマーケティングは、性別、年齢、人種、宗教、性的指向、障がいの有無など、多様な人々をターゲットとし、それぞれのニーズや価値観に合わせたマーケティング戦略を展開するものです。
本記事では、インクルーシブマーケティングの定義、メリット、事例、実践方法、注意点などを解説し、多様性をビジネスの力に変えるヒントをお届けします。
インクルーシブマーケティングの定義
近年、社会における多様性尊重の意識の高まりとともに、企業のマーケティング戦略も変化してきました。その中で注目されているのが、インクルーシブマーケティングという考え方です。
インクルーシブマーケティングとは
インクルーシブマーケティングとは、多様な人々をインクルーシブ(包括)して、尊重するマーケティングです。年齢、性別、国籍、障がいの有無、性的指向など、さまざまな背景を持つ人々を潜在的な顧客として捉え、それぞれのニーズや価値観に合わせたメッセージや商品・サービスを提供します。
インクルーシブマーケティングは、単にターゲット層を広げるだけでなく、企業文化やブランドイメージにも影響を与えます。多様性を尊重する企業は、従業員の満足度を高め、イノベーションを促進し、社会からの信頼を得ることができます。
インクルーシブマーケティングの意味
インクルーシブマーケティングは、以下の2つの意味合いを持っています。
⑴排除しない
これまでビジネスの対象として意図的に排除されていた人々を、マーケティングプロセスに含めます。
⑵巻き込む
これまでユーザーになり得なかった人々を、商品・サービスの開発プロセスやマーケティングプロセスに巻き込み、共に価値を創造します。
インクルーシブマーケティングの基本
インクルーシブマーケティングを実践するためには、以下の基本を押さえる必要があります。
⑴n=1の視点
インクルーシブマーケティングの重要な要素として、n=1の視点があります。
1人の人と向き合う | 対象の人々を集団として捉えるのではなく、1人の人間として向き合い、その声に耳を傾けること |
対話する | きちんと向き合いコミュニケーションをとり、関係性を築く |
⑵多様性の理解
年齢、性別、国籍、障がいの有無、性的指向など、さまざまな属性を持つ人々のニーズや価値観を理解します。
⑶ターゲット層を絞らない
特定の層にターゲットを絞るのではなく、あらゆる人々を潜在的な顧客として捉えます。
⑷誰にとっても使いやすい商品・サービス
多様な人々が利用しやすい商品・サービスを開発します。
(5)多様な人々が共感できるメッセージ
さまざまな背景を持つ人々が共感できるメッセージを発信します。
従来のマーケティングとの違い
⑴ダイバーシティが前提
ダイバーシティ(多様性)を前提とし、それをインクルージョン(包含)しつつ、事業を持続的に成長させていきます。
⑵多様性の捉え方
従来のマーケティングでは、顧客の違いを軽視しがちでしたが、インクルーシブマーケティングでは、多様性を強みとして捉えます。ニッチなニーズも排除せずに取り込み、より良いものを生み出す可能性を追求します。
もちろんニッチなニーズを全て取り入れることは難しく、取り入れることができなかったニーズも認識して取り組みを継続することで、絶えず成長し続けていくというビジネスモデルです。
⑶マーケティングの範囲
従来のマーケティングは、広告や宣伝など、顧客との接点を増やす活動に焦点が当てられていました。一方、インクルーシブマーケティングは、企業活動全体をマーケティングの対象と捉えます。
例えば、多様な人材を採用する人事制度、多様なニーズに対応できる商品開発、誰にとっても利用しやすい店舗設計など、企業のあらゆる側面をインクルージョン(包容)の視点で見直し、改善していくことがインクルーシブマーケティングに含まれます。
つまり、インクルーシブマーケティングは、単に顧客を増やすだけでなく、企業そのものを多様性と包容性を重視する組織に変革することをめざす、より広範な取り組みと言えます。
インクルーシブマーケティングのメリット
インクルーシブマーケティングは、社会貢献活動のように思われがちですが、実は企業の成長にも大きく貢献する戦略です。多様性を尊重し、誰もが取り残されない社会をめざす現代において、企業がインクルーシブマーケティングを実践することは、さまざまな良い結果をもたらします。
ビジネス成長
インクルーシブマーケティングは、単なる社会貢献活動ではありません。企業は、多様性と包容性を大切にしながら、ビジネスとして利益を獲得する必要があります。CSR(企業の社会的責任)というと、「利益は社会貢献以外のことで得れば良い」というイメージを持たれるかもしれませんが、本来の意味は「企業の能力を社会のために使う」ということです。企業にとって一番の力である本業を通して社会に貢献し、その対価として利益を得て、社会に還元する。これがインクルーシブマーケティングの基本的な考え方です。
新しい顧客との出会いと深いつながり
インクルーシブマーケティングでは、これまでターゲットにしていなかった多様な人々を大切なお客さまとして考えます。年齢、性別、障がいの有無、性的指向など、さまざまな背景を持つ人々のニーズに応える商品やサービスを提供することで、これまで出会えなかった新しいお客さまに出会うことができます。さらに、多様なお客さま一人ひとりの価値観に合わせたメッセージを発信することで、お客さまとのつながりをより深めることができます。例えば、さまざまな人が共感できる広告やキャンペーンを展開したり、お客さまの意見を積極的に商品開発に取り入れたりすることで、お客さまからの信頼を得ることができます。
企業の評判向上と社員の働きがい
インクルーシブマーケティングは、多様性を尊重する企業としての姿勢を社会に示すことで、企業の評判を高め、お客さまからの信頼を得やすくなるでしょう。また、インクルーシブマーケティングは、社員の働きがいにもつながります。多様な人材が活躍できる職場環境をつくることや、社員一人ひとりの個性を尊重する企業文化を醸成することは、社員の帰属意識を高め、より意欲的に働ける環境づくりに役立ちます。また多様な視点を取り入れることで、新たな発想やアイデアが生まれやすくなります。
インクルーシブマーケティングは、企業にとってさまざまな良い影響をもたらします。企業は、インクルーシブマーケティングを戦略的に実践することで、社会に貢献しながら、持続的な成長を達成することができます。
インクルーシブマーケティングの事例
インクルーシブマーケティングは、多様な人々を包み込み、尊重するマーケティング手法です。具体的な事例を通して、その効果を見ていきましょう。
インクルーシブマーケティングの事例
⑴スマートフォンのアクセシビリティ機能
スマートフォンのアクセシビリティ機能は、インクルーシブマーケティングの好例と言えるでしょう。例えば、ボタンを極力排除したデザインは、一見すると使いにくそうに思えますが、実は多くのユーザーにとって利便性をも向上させています。
①直感的な操作
ボタンの数を減らすことで、ユーザーは画面上のジェスチャーやタッチ操作に集中できます。これにより、操作に迷うことが減り、より直感的にスマートフォンを扱えるようになります。
②視覚的なシンプルさ
ボタンが少ないほど、画面がスッキリと見やすくなります。特に、視覚障がいを持つユーザーにとっては、情報が整理され、認識しやすくなるというメリットがあります。
③多様なユーザーへの配慮
ボタン操作が難しいユーザー(高齢者、肢体不自由者など)でも、ジェスチャーやタッチ操作で容易にスマートフォンを操作できるようになります。
他の分野でもインクルーシブマーケティングが実践されています。
⑵化粧品ブランド
さまざまな肌の色のファンデーションを開発し、多様な人種に対応しています。これは、すべての人々が自分に合った製品を見つけられるようにという配慮からです。
⑶食品ブランド
ベジタリアンやアレルギーを持つ人向けの食品を開発しています。これは、食生活の多様性を尊重し、誰もが食事を楽しめるようにという考えに基づいています。
⑷旅行会社
車椅子利用者や高齢者向けのバリアフリーツアーを提供しています。これにより、旅行を諦めていた人たちも、安心して旅を楽しむことができます。
⑸金融機関
外国人や障がい者向けの金融サービスを提供しています。これは、金融サービスへのアクセスを平等にし、誰もが安心して生活できるようにするための取り組みです。
事例からわかること
インクルーシブマーケティングでは、特定のユーザー(リードユーザー)の声を聞きながら、その人たちを十分に満足させる製品やサービスを開発します。その過程で、既存の顧客だけでなく、新たな顧客層や社会全体のニーズも満たすものが生まれます。
⑴他の人たちにも価値を提供できる
特定のニーズに応える製品やサービスは、他の多くの人にとっても価値のあるものとなる可能性があります。
⑵副産物
インクルーシブな製品やサービス開発は、企業に新たな視点や技術をもたらし、イノベーションを促進する可能性があります。
⑶市場開拓
特定のニーズを持つ人々をターゲットとすることで、自分たちが今まで市場と思っていなかったところにも市場を開拓することができます。
インクルーシブマーケティング実践方法
インクルーシブマーケティングは、多様な人々を包み込み、尊重するマーケティング手法です。誰もが取り残されない、より良い社会の実現をめざし、企業が積極的に取り組むべき課題と言えるでしょう。ここではインクルーシブマーケティングを実際に導入する方法をご紹介します。
インクルーシブマーケティングのステップ
⑴自社の現状分析
まずは、自社の顧客層、商品・サービス、企業文化などを分析します。現状を把握することで、どのような課題に取り組むべきか明確になります。
⑵知識や情報を収集
年齢、性別、文化、障害の有無など、さまざまな要素を考慮したターゲティングが必要です。多様性に関する知識や情報を収集し、理解を深めましょう。
⑶社内における議論と認識の共有
インクルーシブマーケティングの重要性を社内で共有し、共通認識を持つことが大切です。ワークショップや研修などを通じて、従業員の意識改革を促しましょう。
⑷具体的な目標設定と計画策定
現状分析や情報収集の結果を踏まえ、具体的な目標を設定し、計画を策定します。目標は、数値で測れるものにすると効果的です。
⑸メッセージとビジュアルの配慮
広告やメディアコンテンツにおいて、多様な人々が反映されるよう配慮しましょう。さまざまな人種、体型、年齢、性的指向などが表現されているか確認します。
⑹プロダクト・サービスの見直し
すべての顧客に配慮した商品・サービスを提供するための工夫をおこないましょう。例えば、アレルギー対応食品や、車椅子利用者向けの設備などが挙げられます。
⑺フィードバックの収集
実際に顧客からの意見や評価を反映し、改善点を探りましょう。アンケートやインタビューなどを通じて、顧客の声を収集することが重要です。
インクルーシブマーケティング実践のポイント
インクルーシブマーケティングを実践する上で、以下のポイントを押さえておきましょう。
⑴当事者の視点に立つ
実際に多様なニーズを持つ人々の声に耳を傾け、彼らの視点に立って考えることが重要です。
⑵長期的な視点を持つ
インクルーシブマーケティングは、短期的な成果を求めるのではなく、長期的な視点で取り組むべき課題です。
⑶社内外との連携
社内だけでなく、NPOや地域団体など、さまざまなステークホルダーと連携することで、より効果的な取り組みができます。
⑷継続的な改善
インクルーシブマーケティングは、一度取り組んだら終わりではありません。常に改善を続け、より良い社会の実現をめざしましょう。
インクルーシブマーケティングの注意点
インクルーシブマーケティングは、多様性を尊重し、すべての人々を包み込むことをめざす重要な概念です。しかし、その実践にはいくつかの注意点があります。誤ったアプローチは、かえって逆効果を生む可能性もあるため、慎重に進める必要があります。
過剰なマーケティング
インクルーシブなアプローチが形だけにならないよう注意が必要です。「多様性」を謳いながら、実際には特定の層にしか配慮していなかったり、表面的な表現にとどまっていたりするケースが見られます。このような過剰なマーケティングは、消費者の不信感を招き、企業イメージを損なう可能性があります
ステレオタイプの排除
多様性を尊重しつつ、偏見を助長しないようなマーケティングの実践方法を心がけましょう。ステレオタイプな表現は、特定のグループに対する誤解や偏見を深める可能性があります。例えば、性別や人種、障がいの有無などに関する固定観念を避け、多様な個性を尊重する表現を追求することが重要です。
具体的な行動と透明性の確保
⑴具体的な行動
インクルーシブマーケティングは、単に言葉や表現を工夫するだけでなく、具体的な行動を伴う必要があります。例えば、多様な人材の採用や、バリアフリーな店舗設計、環境に配慮した製品開発などが挙げられます。
⑵透明性の確保
インクルーシブマーケティングの取り組みは、透明性を持って公開することが重要です。企業がどのような考えで、どのような目標を持って取り組んでいるのかを、積極的に発信しましょう。
多様性をビジネスの力に変えるインクルーシブマーケティング。年齢、性別、人種、性的指向、障がいの有無など、さまざまな背景を持つ人々を尊重し、ニーズに合わせたマーケティング戦略を展開します。
企業は、多様な顧客との出会い、深いつながり、評判向上、新規市場開拓、従業員エンゲージメント向上など、多くのメリットを得られます。
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