最終更新:2025年2月
スマートフォンやインターネットが普及して、私たちの生活は大きくデジタル化し、企業と顧客の関係もオンライン重視に変化しています。企業が顧客と良い関係を築き成功するには、デジタルエクスペリエンスマーケティング(顧客がデジタルを通して得られる体験)向上が不可欠です。本稿では、デジタルエクスペリエンスマーケティングの基礎知識として、概念やメリット、方法、トレンドなどを解説します。
デジタルエクスペリエンスマーケティングとは
近年、顧客の行動はますますデジタル化しており、企業は顧客との接点をデジタル上で構築・強化することが不可欠になっています。
デジタルエクスペリエンスマーケティングは、デジタル技術を活用して顧客体験を向上させ、企業のブランド価値を高めるための包括的な戦略です。
デジタルエクスペリエンスマーケティングの定義と重要性
⑴デジタルエクスペリエンスマーケティングの定義
デジタルエクスペリエンス(Digital Experience)とは、ウェブサイトやアプリ、SNSなど、あらゆるデジタルチャネルを通じて顧客との接点を最適化し、顧客満足度を高めるマーケティング手法です。
体験(Experience)という言葉が示すように、デジタルエクスペリエンスは顧客がデジタル技術やサービスを通じて得るすべての体験を指します。
顧客のニーズや行動を分析し、個別対応されたコンテンツやサービスを提供することで、顧客満足度を高め、長期的な関係性を築くことをめざします。
⑵デジタルエクスペリエンスマーケティングの重要性
デジタルエクスペリエンスマーケティングは、今日のビジネスにおいて不可欠な要素となっています。その重要性は、以下の5つのポイントに集約できます。
①顧客ロイヤリティの向上
優れたデジタルエクスペリエンスは、顧客満足度と信頼感を高め、長期的な愛用につながります。
②ブランド認知度の向上
魅力的なデジタルコンテンツや使いやすいウェブサイト・アプリは、顧客との接点を増やし、ブランド認知度向上や新規顧客獲得にもつながります。
③コンバージョン率の向上
ニーズに合った情報やサービスを適切なタイミングで提供することで、顧客の購買意欲を高め、コンバージョン率が向上し、売上増加に貢献します。
④顧客データの収集と分析
デジタルチャネルでの顧客接点から得られるデータは、顧客理解を深め、マーケティング戦略の立案・改善に役立ちます。
⑤競争優位性の確立
デジタルエクスペリエンスマーケティングは、競合他社との差異化や顧客への魅力的な体験提供につながります。
デジタルエクスペリエンスマーケティングと混同されやすい概念
デジタル・トランスフォーメーション(DX)とデジタルカスタマーエクスペリエンスは、どちらも今日のビジネスにおいて重要な概念ですが、デジタルエクスペリエンスマーケティングとは異なる意味を持ちます。
⑴デジタル・トランスフォーメーション(DX)とは
DXは、企業がデジタル技術を活用して、ビジネスプロセスや組織文化を変革し、競争優位性を確立することをさします。
⑵デジタルカスタマーエクスペリエンスとは
デジタルカスタマーエクスペリエンスは、顧客がデジタルチャネルを通じて企業と接する際の体験全体をさします。
デジタルエクスペリエンスマーケティングは、DXの一部であり、デジタルカスタマーエクスペリエンスを向上させるための具体的な戦略となります。
デジタルエクスペリエンスの例
デジタルエクスペリエンスは、ウェブサイト、スマホアプリ、SNS、VRなど、さまざまなデジタルインターフェースを介したサービス体験全般を指します。高品質なDXは顧客満足度とサービス評価を高めますが、低品質な場合は顧客離れを引き起こします。
【具体例】
- パーソナライズ
- ウェブサイトやメールマガジンで、顧客に合わせた情報を提供
- 利便性
- モバイルアプリで、いつでもどこでも商品購入やサービス利用が可能
- インタラクション
- SNSキャンペーンで顧客参加を促し、満足度を向上
- 迅速な対応
- チャットボットで顧客からの問い合わせに迅速に対応
- スムーズな体験
- Eコマースサイトで快適な購入体験を提供
- 新たな体験
- スマートデバイスや会話型AIを活用した革新的なサービス
- 多様なチャネル
- メール、SNS、アプリ、ウェブサイトなど、さまざまなチャネルで顧客と接点を持つ
上記のように、デジタルエクスペリエンスは多岐に渡ります。企業は顧客との接点となる全てのデジタルチャネルにおいて、最適な体験を提供できるよう努める必要があります。
デジタルエクスペリエンスを向上させるメリット
デジタルエクスペリエンスの向上は、顧客と企業の双方にとって、さまざまなメリットをもたらします。
ユーザーが得られるメリット
デジタルエクスペリエンス向上は、顧客が求めるものを効率的に見つけ、スムーズにサービスを利用できるよう、直感的な操作や手続きの簡素化、場所を選ばない利用環境を提供する必要があります。
例えば、ECサイトの商品検索で絞り込み機能が充実していたり、検索結果が見やすければ、顧客はすぐに目的の商品を見つけられます。また、購入手続きが簡単で支払い方法が豊富であることも顧客満足度向上につながります。スマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスを通じて、顧客はいつでもどこでも企業とつながり、サービスを利用できます。
事業者が得られるメリット
⑴事業成長
デジタルエクスペリエンス向上は、顧客増、解約減、LTV(顧客生涯価値)の向上など事業者の業績に直結します。顧客に選ばれるサービスとなることで、収益増に加え、ブランド・アイデンティティと競争優位性を確立できます。
例えば、顧客属性や行動履歴に基づいた個別対応された情報やコンテンツ提供は顧客の満足度を高めます。また、チャットボットによる迅速な問い合わせ対応や、SNSでの顧客参加型キャンペーンも、顧客との良好な関係構築につながります。
⑵費用対効果の高い機会を創出する
デジタルチャネルを活用することで、従来のマーケティング手法よりも費用対効果の高い施策を実施することができます。
従業員が得られるメリット
デジタルエクスペリエンス向上のために導入されるデジタル技術は、業務効率も向上させます。例えば、システム連携によるデータ共有や自動化による手作業削減などにより、従業員はより生産性の高い業務に集中できます。
例えば、顧客管理システム(CRM)とマーケティングオートメーションツールを連携させれば、顧客情報を一元管理し、パーソナライズされたメッセージを自動配信できます。これにより、マーケティング担当者は手作業を減らし、より戦略的な業務に集中できます。
デジタルエクスペリエンスを向上させる方法
現代のビジネスにおいて、デジタルエクスペリエンスの向上は欠かせない要素の一つです。顧客とのあらゆる接点を最適化し、顧客満足度を高めるためには、以下の点が重要となります。
顧客理解と課題解決
デジタルエクスペリエンス向上の基盤となるのは、顧客の深い理解です。顧客のニーズや課題を把握するためには、従業員や顧客の声に耳を傾けることが重要です。
⑴顧客理解の深化
①顧客の意見を聞く
アンケートやインタビューを通じて、直接、意見や要望を収集しましょう。
②デジタルフィードバックとオンラインレビューの活用
近年、デジタルフィードバックとオンラインレビューが顧客との接点として重視されています。
- デジタルフィードバック
- ウェブサイトやアプリ上でアンケートやチャットボットなどを通して、顧客が気軽に意見を表明できる仕組みを構築しましょう
- オンラインレビュー
- AmazonやGoogleレビューなどの顧客評価やコメントは貴重な情報源です。肯定的な意見だけでなく、否定的な意見にも真摯に向き合い、改善につなげることが重要です。
⑵課題解決
収集した情報を基に、カスタマージャーニーマップを作成して顧客体験を可視化することで、課題が明確になります。カスタマージャーニーマップは顧客がサービスを利用する際の行動、思考、感情を時系列順に可視化したものです。顧客接点(タッチポイント)における体験を詳細に把握することで、改善点を発見できます。
デジタル技術の活用
課題解決には、適切なデジタル技術の活用が不可欠です。顧客体験を向上させるためのさまざまなデジタルツールが存在しますが、ここでは代表的なものを紹介します
⑴DXP(デジタルエクスペリエンスプラットフォーム)
デジタルエクスペリエンスマーケティングに必要な顧客データを統合・管理するプラットフォームです。ウェブサイト、アプリ、メール等、さまざまなチャネルのデータを一元化し、顧客一人ひとりに最適な体験を提供します。
⑵ソーシャルリスニングとDEM(デジタルエクスペリエンスモニタリング)
顧客の感情や行動をリアルタイムに把握し、迅速な対応を可能にします。
- ソーシャルリスニング
- X(旧Twitter)やFacebookなどのソーシャルメディア上の投稿を分析し、顧客の意見や感情を把握する技術です。
- DEM(デジタルエクスペリエンスモニタリング)
- ウェブサイトやアプリの利用状況を監視し、顧客体験に影響を与える問題をリアルタイムに検知する技術です。
⑶対話型AIとコグニティブ・コンピューティング
顧客との自然な対話や高度な分析でデジタルエクスペリエンス向上を支援します。
- 対話型AI
- 人間と自然な会話をおこなうAIです。チャットボットとして顧客対応に活用することで、24時間365日問い合わせに対応できます。
- コグニティブ・コンピューティング
- 人間の思考プロセスを模倣する技術です。大量のデータを分析し、複雑な問題を解決します。顧客行動分析により、より効果的なマーケティング戦略を立案できます。
最新技術の導入
デジタルエクスペリエンスを向上させるためには、常に最新技術に目を向け、積極的に活用することが重要です。ここでは、近年注目されているいくつかの技術についてご紹介します。
⑴ContentOps(コンテンツオペレーション)
コンテンツの企画、作成、配信、分析といった一連のプロセスを効率的に管理するための仕組みです。ワークフローの自動化やコラボレーションツールの活用により、コンテンツ制作チームの生産性を向上させることができます。
⑵デジタルツイン
現実世界にある物体や状況をとそっくりな「双子」をサイバー空間上に再現する技術で、さまざまなシミュレーションや分析をおこなうことができます。
⑶オムニチャネル
多様なチャネルで一貫性のあるコンテンツを提供し、デジタルエクスペリエンスを向上させます。
- オムニチャネル
- 複数のチャネル(店舗、ウェブサイト、アプリなど)を連携させ、顧客と接点を作り、購入の経路を意識させない販売戦略です。
デジタルエクスペリエンスを向上させる3ステップ
本章では、デジタルエクスペリエンスを向上させるための具体的なステップについて解説します。
目標設定と導入ハードルの低減
⑴目標設定と顧客理解
デジタルエクスペリエンス向上には、まず目的を明確にしましょう。顧客満足度やコンバージョン率向上など、具体的な目標を設定します。次に、目標達成のための顧客理解を深めます。
⑵顧客のハードルを下げる
顧客理解に基づき、顧客がサービスや商品を利用する際のハードルを下げることが重要です。ウェブサイトやアプリのUI/UXを改善し、操作性を向上させる、分かりやすい説明文やFAQを用意する、無料トライアルやサンプル提供など、さまざまな施策が考えられます。顧客にとって、サービスや商品を利用することが「簡単」「便利」「お得」と感じられるように工夫しましょう。
現状分析と施策実行
(1)現状分析
現状のデジタルエクスペリエンスを分析し、課題や改善点を見つけます。ウェブサイトのアクセス状況や顧客行動、アンケート結果などを収集し、競合他社の状況も参考にします。
⑵施策実行
顧客理解と現状分析に基づき、具体的な施策を実行します。ウェブサイトのデザイン改善、コンテンツ最適化、パーソナライズされた情報提供、チャネル連携強化などが考えられます。
評価と組織体制
⑴評価
施策実行後は効果測定ツールで評価し、A/Bテストなどで効果的な施策を見つけ、継続的に改善活動をおこないましょう。
⑵組織体制
デジタルエクスペリエンスの向上には、特定の部門や担当者だけでなく、組織全体の共通認識として、顧客視点に立ち、部門を超えて連携し、顧客体験を向上させるための意識改革が必要です。
そのためには、経営層の理解とサポートが不可欠です。経営層がデジタルエクスペリエンス向上を重要な経営戦略として位置づけ、必要な資源を投入し、組織文化を醸成する必要があります。
デジタルエクスペリエンスマーケティングの導入例
デジタル技術が進化し、顧客体験(CX)の重要性がますます高まる現代において、企業はウェブサイトやアプリ、SNSなどのデジタルチャネルを通じて、顧客とのエンゲージメントを深めるための新しい手法を模索しています。ここでは、デジタルエクスペリエンスマーケティングの導入例をご紹介します。
パーソナライズされたレコメンデーション
あるECサイトでは、顧客の過去の購入履歴や閲覧履歴をもとに、「あなたにオススメの商品」を自動で選んでくれ、顧客が興味を持ちそうな商品をウェブサイトやアプリに表示することで、顧客の購買意欲を刺激しています。
参加型コンテンツ
ある飲料メーカーは、SNSで参加型キャンペーンを実施して、「好きなフレーバーに投票!」や「オリジナルレシピ投稿!」で顧客との交流を促進しました。参加型コンテンツは、企業と顧客の一体感を高めます。
バーチャル店舗
あるアパレルブランドでは、VR技術でバーチャル店舗をオープンして、顧客は自宅で店舗体験ができ、試着やコーディネート提案など、リアル店舗同様のサービスを受けられるようにしました。
これらの事例から、デジタルエクスペリエンスマーケティングが顧客エンゲージメントと購買行動を促進する上で有効なことがわかります。企業は、自社のブランドや顧客に最適なデジタル体験を設計・提供することが重要です。
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